平安時代の寝殿造りで使われた几帳、衝立、屏風、 明かり障子などの調度品から進化したものです。当初これらの調度品の上張りは絹でしたが、序々に中国から伝来した唐紙が使われるようになっていきました。その唐紙の上に大和絵が描かれるようになり、初期の間仕切り・防寒といった 用途のほかに装飾的な要素が加わり、貴族文化に定着していきました。この襖の原型は唐紙障子と呼ばれ、はめ込み障子の形で部屋を仕切るだけした。

平安時代中期以降になって、引き違いにする遣戸障子(やりどしょうじ)が登場し、鎌倉・室町時代には、書院造への移行が始まり、襖障子には大和絵・水墨画などが、部屋の格式や用途に応じて描かれるようになりました。桃山時代になると絢爛豪華な障壁画や金箔をふんだんに使った襖絵を用いるものが盛んに作られました。一方、反動的に「侘び・寂び」を重視した数奇屋造がうまれ、それに合う自然な作風の襖が作られました。

江戸時代には商人の家などに唐紙が広がり、中期になると一般の民家にも明かり障子が広まりました。それとともに襖絵も淡白で単純なものへと変わっていきました。明治時代になると、洋風化の風潮の中、和洋折衷で洋室と和室が同じ家に混在するようになってきました。そのため、片面が洋風で片面に襖紙が張ってある、という戸襖が使われるようになりました。大正、昭和時代になると美術品としての役割がなくなっていき均一化され、大量生産と均質化により、実用的な性格になって一般家庭へと広まっていきました。

和襖

伝統的な技法で作られた襖。スタンダード品から高級品まで、幅広く使われています。

木製の周囲カマチと縦3本横11本の 中子で障子のように組んだ骨地に、下張紙・胴張紙を張った襖下地。

組子にチップボール紙又は薄いベニアを張った襖もある。

何度でも貼り替え可能。

量産襖

ハニカム芯襖

周囲カマチと、粗く組んだ中子の間にペーパーコアを入れ、下張紙を張って仕上げた下地の襖。

段ボール芯襖

量生産の代表的な襖です。3層ぐら いに重ねたダンボールを芯材として、 一番上のダンボールの量面には、湿 気防止用のアルミ箔が貼られていま す。この襖は、張り替えがしにくく、 そり、ねじれが発生しやすいという 欠点を持っていますが、芯材を機械 生産することができるためコストが 安くすむという特徴もありま す。

発泡スチロール芯襖

プラスチックの発砲体を芯材とした 襖です。プラスチックの種類にはス チロールとスチレンの2週類があり ますが、スチロールを使っているも のが大半を占めています。この襖は 張り替えがしにくいことや、そり、ねじれが発生しやす い欠点がありますが、 大量生産ができるのでコストが安く 寸法詰めも自由になるという利点が あります。

その他

源氏襖

和襖の一部に、明り取り用の障子をはめ込んだ襖。

組子にチップボール紙又は薄いベニアを張った襖もある。

何度でも貼り替え可能。                            源氏襖(ふすま)の画像

骨・下地材
木製の組子と呼ばれる骨格。


組子の外周を囲う部分。


襖の表面に貼られ、構造面でも意匠面でも重要な役割を果たす部材。
[紙の種類]
本鳥の子・上新鳥の子・上級織物・中級織物・普及品織物

引き手
「引手」と呼ばれる取っ手は、襖の開閉時に手をかけるという実用的な部分と、上張りの柄を引き立て襖や和室全体のデザインアクセントの役割も担う。

 近年の住宅では、木製に見える建材の殆どが、塩化ビニールやオレフィンシートと呼ばれるプラスチックです。印刷技術の向上により、天然木の画像が印刷されているので、外観で識別することは難しいです。

 襖は、希少な自然素材の建具です。伝統的工法の和襖は、調湿機能や断熱性に優れ、日本の気候に適しています。徳島県立工業技術センターで独自に行った実験では、押入れに使用する一般的な襖2枚について、約700mlの調湿機能を確認できました。また、経年変化により「わび・さび」も感じられます。「わび・さび」とは「不可避の受容」と解釈されます。近年では海外発信による和への関心の高まりもあって、国内でも伝統的な和風が再評価されています。

 当社の出荷状況からは、塗り縁を使った伝統的な襖の比率が増えていることが分かります。濡れ艶が特徴のカシュー漆の塗縁が、和を演出したいユーザー様の感性に合うということなのでしょう。量産品的な和室は少なくなりましたが、和室に自分らしさを演出される方や文化的ストーリーに関心のある方が、和の演出として上手に襖を取り入れられているのだと思います。